「ロンドンに着いたら、インド料理を食べるといいよ」
これは定説である。
3人くらいの人に、同じセリフを聞いた。
ロンドンは、かつて植民地だった理由からか、インド料理屋が比較的多い。
実際、カレーの種類も豊富で、より本格的な味らしいのだ。
なかでも、密集しているインド人ストリートが、この「ブリック・レーン」である。
ちょうど、ロンドンの、あまりおいしくないごはんにも辟易してきたところだ。
カレーが食べたい。
私の愛読書「わがまま歩き ロンドン」にも、
「ブリックレーンは最近アツい」とある。(2004年版だけど)
私は今、猛烈にカレーが食べたい。
うまいカレーと出会うには、カレーそのものとのエンカウント率を上げるのみ。
そして、直感で「ここだ!」と思ったところに、入るのだ。
リヴァプール・ストリート駅から歩いて10分。
ついた。
西洋とインドが入り交じった、なかなか素敵な街並みだ。
さて、カレー屋は……と探すと、やはり結構ある。
パッと見た感じ、特にすごく賑わっているところもない。どこに入ればいいだろう?
愛読書「わがまま歩き ロンドン」にも、
「カレー屋は味を競っていて、甲乙つけがたい」とある。
いったいどこに入ればいいのか……ん?
お、この店、「BALTI HOUSE」という何かで、4つ星半のレーティングをとっている。
なるほど。賞を取っている店なら、うまいに違いない。
お客さんも入ってるみたいだし、ここにしようかな。
……あれ?
付近を見渡すと。
BBC「ワールドベストカレー賞」ノミネート
マスターシェフオブザイヤー (2006年、2007年、2008年)
ブリックレーンカレーフェスティバル2009年ウィナー
ウィナーオブETHICAL(エスニカルの間違い?)&グッドフードアワード2009年、2010年
なぜか客引きは顔を隠す。
ザ・ベスト・オブ・ブリックレーン(※自称)
……おい。
全部聞いたことないぞ。
これはもしかしてあれか。
「中村インタラクティブ・アド・アワード2010年グランプリ」とか
「宇宙公認・江東区Web広告祭10年連続クリエイターオブザイヤー」
みたいなことか。
よく見ると、不思議なことに、
お客さんはすべて、一番店先に座っていて、奥はガラガラだ。
これはおそらく、お客が入っているように見せかけるために、必ず店先に座らせるシステム(もしくはサクラ)なのではないか。
……すべての店が信用できなくなってきた。
さすがインドクオリティ。
しかし、結局マスターシェフオブザイヤーの店に入った。
当然のごとく店先に座らされた。
ボーイに「マスターシェフオブザイヤーはどの人?」と聞いたら、
「は?」
「いやだから、この看板に書いてあるマスターシェフって、あのシェフのこと?」
「…あ!あーあーあー!……ちょっと待ってて」
と、店の奥に戻り、厨房のシェフらしい人と何か会話。
うなずくボーイ。戻ってくる。
「今日はいないよ」
……おい。
それ厨房で確認する必要あるのか。
「『今日は居ない』って言え」って言われたんですね。
万が一「あの人だよ」などと、適当に言ったら、そのあとぼくが「マスターシェフの証とかあるんですか?」と絡んできたりする可能性を憂慮して、「居ないっていっとけ」という決断が下されたのであろう。
つーか、いないのかよ。マスターシェフがウリなのに。
実は、カレーは結構本格的な味で、うまかった。しかも安い。
日本では、ここまで本格的にスパイスの効いた、いろいろな種類のカレーを出している店はそうそうないに違いない。
だから騙すな。